「妊娠は病気じゃない」って本当?──現場の看護師が感じたモヤモヤの正体

こんにちは。
私は看護師として30年以上、急性期病棟や外来、訪問看護など様々な現場で働いてきました。
そして今、50代になって思うことがあります。

「妊娠は病気じゃないんだから、働けるでしょ?」

そんな言葉、あなたも聞いたことはありませんか?
これ、実は私も若いころに言ってしまったことがあるんです。
でも、自分が妊娠・出産を経験し、後輩たちの妊娠期を見守ってきた今、心から思うのは――

「妊娠は病気じゃないけれど、“配慮のいらない健康体”でもない」ということです。

妊娠中の身体、想像以上にきついんです

妊娠すると、ただお腹が大きくなるだけじゃありません。

  • 朝起きた時から吐き気が止まらない
  • むくみで足がパンパン
  • 血圧が上がる
  • 夜勤明けに立ちくらみ
  • 何でもない階段がしんどい

それでも「ごめん、体調悪い」って言うの、勇気がいるんですよね。
なぜなら、職場には「妊娠してても普通に働くのが当然」っていう空気が、確かにあるからです。

「妊娠は病気じゃない」文化の背景には…

この考え方、実は昔からあるようです。

戦前の日本では、「産めよ殖やせよ」のスローガンがあった時代。
妊娠は「女性の役目」や「当たり前のこと」とされ、働く・働かない以前に“配慮されるべきもの”とは見なされていなかった。

そして戦後も、「妊娠=自然なこと=甘えるな」という文化は、根強く残ってきたのだそうです。

📖 出典:木村涼子『母性保護と女性労働』、日本看護協会、厚生労働省資料など

制度はある。でも、使いづらいのが現実

たとえば、妊婦には以下のような法的保護があります。

  • 産前産後休業(労働基準法)
  • 時間外・夜勤免除(申請によって可能)
  • 医師の指導に基づく勤務軽減(母性健康管理指導事項カード)

これらは厚生労働省や看護協会がしっかり用意してくれている制度です。

でも、現場ではどうでしょう?

  • 「人手が足りないから無理だよね…」
  • 「言い出すのも気まずい」
  • 「制度を使うと評価に響くかも」

結局、「我慢して続ける」以外の選択肢がないように感じてしまう人、多いと思います。
そして、体調を崩してしまってからようやく休職、というケースも実際に見てきました。

看護職だからこそ、まず私たちが変わりたい

私は思うんです。
“妊娠は病気じゃない”という言葉の裏には、「弱音を吐かずに働け」という無言の圧力があると。

だけど本来、看護職は「人に寄り添う」仕事のはず。
だったらまず、自分たちの仲間の体や心にもっと寄り添ってもいいんじゃないかって思うんです。

妊娠中に体調が悪いのは、甘えでも怠けでもない。
制度を使うのも、周囲に相談するのも、プロとしての「自己管理」だと私は思います

あなたの「無理して頑張る」を止められる人は、あなただけ

「みんなに迷惑をかけるかも…」
「言いにくい…」
その気持ち、痛いほど分かります。

でもどうか、無理をしすぎないで。
必要な時には、堂々と休んでください。

制度も、医師の助言も、使ってください。

妊娠は病気じゃない。
でも、病気と同じくらい身体を守る必要がある「特別な状態」なんです。

最後に

制度があるのに使いづらいなら、
文化が人を苦しめているのなら、
まずはそのことに「気づく」ことが一歩だと思っています。

同じ医療現場で働く仲間として、これから妊娠・出産を迎える人たちを、どうか優しい目で支えていけたら──
そう願いながら、この文章を書きました。

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