皆さん、こんにちは。
現役看護師として、もう30年以上現場で働いている、アラフィフブロガーのエストです。
最近転職して、施設訪問看護師として夜勤専従として働いているのですが、入所者さんの笑顔に励まされながら、目まぐるしい日々を過ごしています。
さて、今日は少しだけ、皆さんの生活にも関わる、でもちょっと難しいと思われがちな「診療報酬」のお話をしたいと思います。
実は私、あまり診療報酬のことがわかっていませんでした。
診療報酬が病院等の経営や、医療従事者の給料に関係するものだなというくらいの浅い認識。
最近、なぜ、看護師の給料はなかなか上がらないのか?という疑問を持って調べたり、ブログを書いたりしていますが、その名で絶対に出てくるのが【診療報酬】。
これはやっぱり、ちゃんとわかっていた方がいいよな、もしかしたら私と同じように【診療報酬】についてあまり知らない人がいるのではないかなと考え、また医療従事者以外も生活に関係してくると思い、今回は【診療報酬】について調べてみました。
「診療報酬?何それ、難しそう…」って思った方もいますよね。
大丈夫です!私も現役で働いていても、「あれ?これってどうなってるんだっけ?」って思うことがたくさんありますから。
今日は、私が働きながら感じた、この診療報酬というものの「不思議」や「疑問」を、皆さんにも分かりやすくお伝えできたら嬉しいです。
私たちの医療費、どこへ行ってるの?
私たちが風邪を引いて病院に行ったり、けがをして治療を受けたりする時、窓口で治療費の一部を払いますよね。
残りのほとんどは、皆さんが毎月払っている健康保険料から支払われている、ということはご存じだと思います。
この、健康保険から病院に支払われる「医療サービスの代金」が、まさに「診療報酬」なんです。
簡単に言うと、診察1回、点滴1回、注射1本、手術1回…それぞれに国が決めた「お値段(点数)」がついていて、その合計が病院の収入になる、という仕組みです。
1点あたり10円なので、例えば「診察料200点」だったら、病院に入るお金は2,000円、ということになりますね。
「2年に一度の大議論」って何だろう?
この診療報酬、実は2年に一度、国で「見直し会議」が開かれるんです。
これが「診療報酬改定」と呼ばれるもので、その時期が近づくと、テレビのニュースや新聞で「診療報酬改定の行方」なんて言葉を耳にすることが増えます。
なんでこんなに大騒ぎになるの? って思いますよね。
それは、この「お値段」の決め方が、私たち全員に関わる、ものすごく大きな影響を持つからなんです。
・病院からすると… 病院の主な収入源なので、このお値段が上がれば経営は楽になるし、新しい設備を導入したり、私たち看護師や先生たちのお給料を上げたりする余裕が生まれます。
だから、病院側は「もっと上げてほしい!」と強く要望します。
・私たち患者さん(保険料を払う側)からすると… 診療報酬が上がれば上がるほど、国全体の医療費が膨らみます。
その分、皆さんが払う健康保険料や税金が多くなる可能性が出てきます。
「負担が増えるのは困るな…」と、国のお財布を管理している財務省などは、負担が増えないようにと意見を出します。
・医療の質や安全からすると… 診療報酬の決め方で、どんな医療が大切にされるかが変わります。
例えば、「病気になった人を看る」だけでなく、「病気にならないように予防する」ことにもっと点数がつけば、予防医療に力を入れる病院が増えるかもしれません。
また、私たち医療従事者が頑張って質の高いケアを提供しても、それが診療報酬で評価されなければ、「なんでこんなに大変なのに…」とモチベーションが下がってしまうこともあります。
ほら、こう考えてみると、この「お値段」の決め方って、ものすごく多くの人や、医療のあり方自体に関わってくる、大切なことだと思いませんか?
看護師が感じる「あれ?」…賃金と経営の不思議な関係
私が長年、病院で働いていた時、特に「あれ?」と思うのが、この診療報酬が、私たちの給料や病院の経営にどう響いているのか、という点です。
「看護師って給料良いんでしょ?」って言われると、正直、複雑な気持ちになることがあります。
確かに、夜勤手当や残業代を合わせると、それなりの額になることもあります。
でも、これはあくまで「がんばって夜も働き、残業した分」の手当であって、基本給だけを見ると、実はそんなに高くない、と感じる看護師は少なくありません。
どうしてこんなことが起こるんでしょう?
それは、病院の収入のほとんどが、国が決める「診療報酬」で決まっているからです。
普通の会社なら、頑張って売り上げを伸ばしたり、コストを下げたりして利益を出したら、それを社員のお給料に還元できますよね。
でも、病院はそう簡単にはいきません。国が決めたお値段でしか医療を提供できないので、物価が上がったり、私たちの人件費が上がったりしても、それに合わせて自由に「値上げ」ができないんです。(※3)
例えば、医療材料の値段が上がったり、電気代が上がったりしても、すぐに診療報酬が上がるわけではありません。
そんな中で、病院の経営は常にギリギリの綱渡りを強いられています。
その結果、どうなるかというと…
・基本給がなかなか上がらない: 病院の収入がなかなか増えないので、私たち医療従事者の基本給を大幅に上げるのが難しくなります。
・手当に頼りがち: 基本給が上がりにくい分、夜勤や残業という形で頑張った分を「手当」で補う形になります。
だから「夜勤をたくさんしないと生活が苦しい…」と感じる若手看護師もいるんです。
・「責任」や「専門性」への評価の疑問: 私たちは、何年もかけて専門知識を学び、毎日、人の命と健康を預かる重い責任を負っています。
急変対応や複雑な処置、患者さんの心に寄り添うケアなど、一瞬たりとも気が抜けません。
これほどの専門性と責任に対し、他の業種と比べて、私たちの賃金が果たして十分なのか?と疑問に思うことがあります。
これが、医療現場で働く人たちの「モチベーション」や「やりがい」にも影響してしまうんです。
高齢化社会で、医療費は増える一方…どうする?
日本は世界でも類を見ないスピードで高齢化が進んでいます。
高齢者が増えれば増えるほど、医療を受ける機会も増え、それに伴って国全体の医療費(国民医療費)もどんどん膨らんでいきます。(※7)
この増え続ける医療費をどうやって賄っていくのか、これは国にとって本当に頭の痛い問題です。
だから、診療報酬を改定するたびに、「医療の質を落とさずに、どうやって医療費を抑えるか」という厳しい議論が交わされるんです。
私たちは現場で、日々、患者さんの命と向き合っています。
新しい治療法や薬が登場するたびに、「これで患者さんの苦痛が減らせる!」と喜びを感じます。
しかし、それらが保険適用になり、誰もが受けられるようになるためには、この「診療報酬」という壁を乗り越える必要があるのです。
私たち一人ひとりの関心が、医療の未来を創る
いかがでしたか?
「診療報酬」という言葉が、少しは身近に感じられたでしょうか。
私がこのブログで皆さんに伝えたかったのは、診療報酬は、決して医療従事者だけの問題ではない、ということです。
・ 私たちがどんな医療を受けられるか
・私たちを支える医療従事者が、安心して働き続けられるか
・そして、私たちの健康保険料や税金の負担がどうなるか
これら全てに、診療報酬が深く関わっています。
2年に一度の改定の時期が来たら、「また難しい話が始まった」と敬遠せずに、少しだけ関心を向けてみてください。
私たち国民一人ひとりが、日本の医療が抱える課題について知り、考えることが、より良い医療の未来を築く第一歩になると信じています。
皆さんのご意見や、疑問に感じたことなども、ぜひコメントで教えてくださいね。
【参考文献・参考資料】
※1:メディコム「診療報酬改定は何年ごと?背景や次の改定タイミングについても解説」
※2:レバウェル看護「看護業界の給与が上がらない切実な問題。その理由と収入を増やす4つの方法」 (2025年1月17日更新)
※3:きたかた院長 note「医院スタッフの賃上げが、なぜ困難か?」 (2023年12月10日更新)
※4:東京ドクターズ「診療報酬の仕組みとは?計算方法もあわせて分かりやすく解説!」 (2024年11月13日更新)
※5:はまだ歯科クリニック「わかっているようでわからない 診療報酬とは何?」 (2025年3月10日更新)
※6:レバウェル看護「令和6年度診療報酬改定で医療従事者の賃上げはどうなるか解説」 (2024年10月2日更新)
※7:厚生労働省「令和4(2022)年度 国民医療費の概況」 (2024年10月11日発表)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/22/dl/data.pdf※8:日本医師会「医療における適切な財源確保について」 (2015年12月16日)
https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20151216_1.pdf(※資料は古いですが、医療機関の費用構造に関する基本的な考え方を理解するのに役立ちます。最新の人件費割合は、医療経済実態調査などのデータで確認できます。)
※9:POST「【緊急調査】2024年度診療報酬改定後の病院経営状況 調査結果 ~このままでは ある日突然、」 (2025年3月10日更新)
https://ajhc.or.jp/siryo/20250310yobo.pdf
コメント