皆さん、こんにちは。
現役看護師として30年以上のキャリアを持つ、アラフィフブロガーのエストです。
「看護師って、収入が良いんでしょう?」
私たちの仕事の厳しさを知らない方から、そんな言葉をかけられることがあります。
もちろん、人の命に関わる専門職ですし、資格取得までの努力を考えれば、それなりの対価を得られるのが当然だと、私も若い頃は信じて疑いませんでした。
夜勤をこなし、残業もいとわず働けば、ある程度の収入にはなります。
でも、最近、心の中でくすぶる疑問が大きくなってきました。
「私たち看護師の賃金は、本当に、この仕事の『専門性』や『責任』に見合っているのだろうか?」
もっと言えば、
「この重い責任と多忙な業務を考えた時、他の業種と比較して、私たちの時給が相対的に低く感じられるのはなぜだろう?」
皆さんも、同じようなモヤモヤを感じていませんか?
専門職としての対価はどこへ?広がる賃金ギャップ
最近、様々な求人情報に目を通すたびに、複雑な気持ちになります。
「未経験から高時給スタート!時給1,300円~!」
「簡単な作業で高収入!深夜手当ありで時給1,500円以上も!」
これらは、特別な資格を必要としない、比較的シンプルな業務の求人であることも少なくありません。
もちろん、どんな仕事も社会にとって重要であり、それぞれの大変さがあることは理解しています。
しかし、その時給が、私たち看護師の「時給換算」を上回るケースがある、という事実に直面すると、どうしても考えてしまいます。
私たちは、国家資格を持つ医療の専門家です。
大学や専門学校で膨大な知識と技術を修得し、常に最新の医療情報にアンテナを張っています。
患者さんの病態をアセスメントし、命に関わる薬剤を正確に管理・投与し、複雑な医療機器を操作し、急変時には冷静な判断と迅速な処置が求められます。
患者さんの命と尊厳を守るという、計り知れない責任を日々背負っています。
夜勤では、複数の患者さんの生命維持管理を一人で担い、緊急時には即座に対応し、医師との連携、記録業務…心身ともに極限まで集中力を求められます。
休憩もままならない日も少なくありません。
このような私たちの仕事の専門性、責任の重さ、そして労働負荷を考えた時、なぜ、資格を問わない業務の時給と比較して、相対的な低さを感じてしまうことがあるのでしょうか?
この「ギャップ」は一体どこから生じているのでしょうか?
「手当頼み」の給与体系が引き起こす課題
この疑問を深掘りしていくと、看護師の給与体系が持つ、ある特徴が見えてきます。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、看護師の平均年収は全職種の平均よりはやや高い水準にあります。
例えば、最新のデータでは、看護師全体の平均年収は約488万円~519万円とされています。(※1)
この数字だけを見ると、「やっぱり看護師って恵まれているじゃないか」と思う方もいるかもしれません。
しかし、この年収は、「基本給」だけで成り立っているわけではない、という点に注目する必要があります。
私たちの給与を大きく押し上げているのは、紛れもなく「夜勤手当」や「残業手当」といった各種手当です。
例えば、看護roo!の調査では、二交代制夜勤の手当相場は1回あたり1万円〜1.2万円程度とされています。(※2)
この手当があるからこそ、私たちは「それなり」の給与を得られているのが実情なのです。
つまり、極端な言い方をすれば、夜勤や残業がなければ、私たちの「基本給」だけでは、必ずしも他の
専門職や、場合によっては一部の非専門職と比較して、突出して高いとは言えない水準になってしまう
可能性があります。
医療機関の経営は、診療報酬制度に大きく左右されます。
医療の質と安全を維持しつつ、限られた予算の中で経営していく必要があるため、人件費、特に基本給
の大幅な引き上げには慎重にならざるを得ないのが現状だと言えるでしょう。(※3)
高まる他業種の賃金水準と私たちの相対的立ち位置
さらに、近年、他の多くの業種で賃金が上昇傾向にあることも、私たち看護師の相対的な賃金への不満
に繋がっています。
少子高齢化による労働力不足が深刻化する中、人材確保のために、特別な資格を必要としない職種でも、時給や基本給を引き上げる動きが活発になっています。
国全体の最低賃金も毎年引き上げられていますよね。(※4)
このような社会全体の賃金上昇の波の中で、私たち看護師の「基本給」が、その専門性や責任に見合っ
たペースで上昇しているのか、という点が問われています。
私たちの仕事は、AIやロボットでは代替できない、まさに「人」が核となるエッセンシャルワークです。
それなのに、その「人」への対価が、社会全体の賃金上昇トレンドから取り残されていると感じてしま
うのは、私たちだけではないはずです。
医療現場の未来のために、今、声を上げよう
このブログを読んでくださっている皆さんは、どう感じましたか?
「まさにその通り!」と共感してくださった方もいれば、「うちの職場は違う」という方もいるかもし
れません。
しかし、この「賃金への疑問」を私たち看護師が抱え続けることは、医療の質を維持し、未来の看護師
を育成していく上で、大きな課題であると私は強く感じています。
質の高い医療を提供し続けるためには、私たち看護師が、心身ともに健康で、そして何よりも「この仕事を選んで良かった」と誇りを持って働き続けられる賃金体系と労働環境が必要です。
この現状を変えるためには、私たち一人ひとりの声が力になります。
「看護師は高収入」という固定観念と、私たちの感じる「リアルな賃金」のギャップを、もっと広く社会に伝えていくこと。
そして、医療従事者の処遇改善が、単なる「私たちのため」ではなく、日本の医療全体の持続可能性に
とって不可欠であることを、広く訴えかけていく必要があると私は考えています。
皆さんのご意見や経験も、ぜひコメントで聞かせてください。
一緒に、未来の看護師が希望を持てる社会を創っていきましょう。
【参考文献・参考資料】
※1:看護roo!「【2025年版】看護師の平均年収いくら?手取り、ボーナス」 (2025年5月22日更新)
※2:看護roo!「看護師の夜勤手当の相場はどのくらい?交替制ごとに平均の金額をご紹介」
※3:厚生労働省「中央社会保険医療協議会」関連資料
(診療報酬制度や医療機関の経営実態に関する最新の資料は、厚生労働省のウェブサイトで随時公開されています。具体的な資料名は時期によって変動しますので、検索して最新のものを参照してください。)
※4:厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」
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